
「チョコレートもいらないから……ママ、おうちに帰りたいよ」
それは、幼い少女が願った、あまりにも小さくて切実な願い。
タンポポの綿毛を飛ばして笑っていた幸せな日常から一転、白血病と闘うことになったエラと、その痛みを代わってあげることのできない両親。
生きること。家族でいること。いつもの家に帰ること。
当たり前だったすべてが、かけがえのない願いに変わっていく。
静かに胸を締めつける、愛と祈り…。
続きを読むことに、少し勇気が必要になるほど心を揺さぶられる一篇です。







「大丈夫?」
ただそれだけの言葉なのに、誰にも気に留めてもらえなかった少年にとっては、きっと少し特別だったのだと思います。
傷ついた心が、誰かの何気ない優しさに初めて触れる瞬間。
焦げた一本のペンから始まった小さな出会い。
それがこの先、孤独だった少年の世界をどう変えていくのか——。
誰かに見つけてもらうことの温かさを感じる一篇です。







誰かを好きになること。
友達と離れたくないこと。
好きな人が、自分ではない誰かを大切にしていると知ること。
詩も歌も、人生の答えを教えてくれるわけではない。
ただ、答えの出ない夜にそっと隣へ座り、「私もそうだったよ」と言ってくれる。
友情と初恋、言葉にならない感情が静かに交差する、十六歳の冬。
青春とはきっと、こういう何でもない夜のことなのだ。





少しでも長く生きてほしい。
けれど、意味を理解できないかもしれない治療や、苦しい副作用を父に背負わせることが、本当に「生きてほしい」という願いなのか。
「僕たちに代わってこれをやってくれるつもりだったんだね」
弟のその言葉によって、怒りとしてしか届かなかった兄の気持ちが、ようやく“優しさ”として見えてくる場面が胸に残ります。
誰かの命に関わる選択に、きっと完全な正解はありません。
だからこそ、この日の家族が抱えた罪悪感も、後悔も、「なるべく優しく接しよう」と決めた思いも、あまりにも切実です。
同じ一日を、母と息子、それぞれの日記から見つめた記録であり、
家族がひとつの命と向き合った、忘れることのできない一日の記録がここにある。
ー ご紹介した書き手さん










