
「きみのことばにおとをあげる」
血に濡れたフルートと、最後の笑顔から始まる物語。美しさと死、救いと狂気、祝福と呪いという相反するものが、言葉と音を通してひとつに重なっていく。
他人の死や壊れていく命に、美しさを感じてしまう林道直人。誰にも明かせない本性を抱え、“優しい善人”として生きる彼が、初めて自分の言葉を差し出した相手が、天才フルート奏者の結野栞。
その言葉は、彼を救う祝福となり、やがて生涯を縛る呪いとなった。
二人の出会いがなぜ悲しい結末へとつながるのか、そして直人をどのような表現者へ変えていくのか。強い光ほど深い影を生むような、危うくも美しい物語の幕開け。







「太陽が顔を隠すなら、私が輝いてやる」
余命わずかな栞が選んだのは、残された命を守ることではなく、最後の一音まで燃やし尽くすことでした。体がもう演奏に耐えられないと知りながら、彼女は直人からもらった言葉に音を与え、愛する人の記憶に自分を刻みつけようとします。
生きることを諦めかけた自分を救ってくれた直人へ、感謝も、愛も、別れも、すべてを込めて奏でられる最後の演奏。その音は草花や風までも震わせ、言葉と音がひとつになって世界を照らしていきます。けれどその美しさの裏には、「忘れないでほしい」という栞の切実で身勝手な願いも隠されている。彼女の演奏は直人を救う祝福であると同時に、彼の人生を生涯縛る呪いでもあり…





音が消えたあとに残ったのは、二度と埋められない沈黙だった。
伝えられなかった感謝と後悔だけが膨らむ一方で、栞の命は静かに終わりへと近づいていきます。
忘れられたくないからこそ、最も美しい姿を刻みつけ、二度と会わないことを選んだ栞。その決断は、愛する人を守る優しさであり、自分を生涯忘れさせないための残酷なわがままでもありました。
鳴り響いていた旋律が途絶え、物語を包むのは、言葉すら届かない無音。最後に一度だけ会いたかったという栞の本音と、二ヶ月後に届く訃報が胸に深く残ります。愛した人を失った直人に、栞は何を遺したのか。物語はラストへ向かいます。







「他人の人生を、自分のために貪る。表現者とは、そういう怪物なのかもしれない。」
誰かの痛みを描くことは、救いにも暴力にもなり得る。それでも書くのをやめない者は、怪物なのか、それとも人の心をつなぐ者なのか。栞が遺した音を言葉の中で生かしながら、直人が自らの矛盾と共に歩き始める。そして、物語は最終話へ…。
ー ご紹介した書き手さん











